music by remair
「の話聞いてみたいな」
そんな風に言ってくれた人は初めてだった。
私の話が聞きたいなんて…。
今まで私の話し相手は決まっていたから。
だから、どんなことを聞かれるのか?って少し不安だったけれど。
それでも嬉しかったんだ―――…。
あの日超えた時空
「!!」
今朝早く、突然私の泊まっている宿に駆け込んできた望美。
切羽詰ったような表情の彼女に、最初は何事かと少々焦りを感じた…。
が
彼女の口から飛び出したのは、何か事件だとかそういう類のものではなくて。
思わず
「は?」
と間の抜けた声を出してしまった。
「だから、に今日修行に付き合ってほしいんだってば」
「私に?それはまた何で…?」
物好きな…と思わず口に出しそうになった。
それを言うためだけに、こんな朝早く…それも夜明け前に来たというのか。
「九郎さんから聞いたんだけど、って剣の達人だって話じゃない!なんで今まで秘密にしてたの?」
「秘密にしてたっていうか…。言う必要がなかった、かな?第一、私は教えられるほどの腕前じゃないよ?」
どっちかって言うと、九郎さんの方が教えるのは上手いと思うけど。
それに、望美もリズ先生に教えてもらってるなら、私が教えられることなんて何も無いんじゃないかな?
「でも、九郎さんも先生も同じこと言うんだもん。『自分に合った戦い方を見つけなさい。
男と同じ戦い方は女の身には合わない』って」
「なるほどね…。それで私ってことか」
「うん!周りに女の人で剣を持ってる人って言ったら、しか思いつかなくて」
まぁ、確かに。
戦場に出る女の人なんてなかなかいないからね。
今も皆無とは言えないけれど、それでも確かに望美の周りにはいないわね。
「そういうことなら、いいよ。引き受けても。とは言っても大したこと教えられないよ?」
「本当!?ありがとう!!」
いや、そんなに喜ばれても…。
本当に大したことは教えられないからね?
剣を教えることなんてあまり無いからさ。
「すごい!も花断ち出来るんだね」
「そりゃリズ先生に教えてもらったからね」
望美もでしょ?と返せば、『そうなんだけどね』って。
あの後、望美に宿からすぐに引っ張り出されて、神泉苑に引きずるように連れて来られた。
『早く、早く』とせかされたけれど…。
「何かあったの?」
だってねえ?望美って…この前まで素人だったのが信じられないほど、剣の扱いが上手いし。
それにきっと実力だって、そこら辺の兵士なんかじゃ相手にならないと思う。
それなのに、朝早くから私に剣を教えろなんて…
何かあったとしか思えないじゃない?
「それがね…九郎さんと喧嘩したんだ。昨日の夜」
「喧嘩…?どうして?」
また何か言ったのか?あの人は…。
「だって、怨霊との戦い方を見てると…戦場に連れて行くのが不安だとか言い出すんだよ!?
認めるって言ったくせに…」
あぁ、なるほどね。
それで、か…。
「つまり…一度は認めたくせに、まだ渋ってるから怒れたわけね?」
「うん…。そんなに不安なのかな…?私ってそんなに信じられない?」
必死で頑張って、やっとの思いで花断ちを習得出来て…それで認められたと思っていたのに。
それなのに、まだ不安だと言われれば…それは落ち込んで当然よね。
「そんなことは無いと思う。私から見れば、望美は十分強くなってると思うよ?
それこそ最近まで素人だったなんて思えないくらいね」
「それなら…何でかな?九郎さんは私のこと嫌いだとか…?」
不安になってマイナス思考になると、どんどん悪いほうにしか考えがいかないものだよね。
本当に相変わらず、人を怒らせるか不安にさせるか、どちらかの言い方しか出来ないんだから…。
これは一度説教しなきゃいけないかしらね。
って言っても、多分直らないと思うけど…。
あの人のそういう物言いは昔からだし。
「どっちかって言うと、好きなんじゃない?だから心配になってしまう。望美が戦場に出て、傷つかないかってね」
「って、前向きな考え方するよね。羨ましいな…」
「まぁね。だけど、私が言ったことは多分ほぼ外れてないよ。きっと本人に『心配してくれてありがとう』って言えば
真っ赤になって否定すると思うけどね」
なんかその光景が容易に想像できるわ。
でも他にも言い方ってものがあるのに…どうして素直に心配だからって言えないのかしらね?
「ま、その反応が返ってきたら図星ってこと。試してみたら?」
「そうだね。仕返しのつもりでやってみようかな」
「そうそう、バチは当たらないんじゃない?」
よし、ウォーミングアップ代わりの花断ちはおしまい。
そろそろいいでしょ、始めても。
「それじゃあ、望美。試しに斬りかかって来てみて」
「え?真剣なのに危ないんじゃ…?」
「大丈夫、大丈夫。あ、もちろん本気でね」
傷を負うようなヘマはしないよ?
それに、望美を傷つけるようなヘマもね。
「分かった」
少し戸惑ったみたいだけれど。
私の余裕そうな態度に、大丈夫だと判断したのか望美が頷いた。
ス…っと望美が切先を私へと向けた。
構えはなかなか…
でも、足りないものがあるね。
「やっ!」
振り下ろされる一本。
私はそれをギリギリまで見つめていた。
剣の向こう側で、望美が目を見開いたのが確認できる…。
ガキィン
と刀のぶつかる音がした。
ググッとお互い譲らずのせり合いになる。
が、それも一瞬のこと。
直ぐに望美は、私に剣を押し返された。
自分の顔面ギリギリのところで剣を受け止めた私の方が、体勢的に不利だったのにもかかわらず…だ。
「今ので何か分かったことは?」
何で?って顔をしている彼女に問いかける。
「腕の力が足りないってこと…?」
「半分正解ってところかな。正確には腕だけじゃなくて、全身の力が足りないのよね」
腕の力が足りないって答えが出たってことは、それなりに頭の回転は速いわね。
だけど…
「じゃあ、九郎さんと先生が言いたかったのは、力をつけろってこと?」
焦りは禁物よ?
「はいはい、焦らないの。あの二人が言いたかったのはね…その力の差をどうやって埋めるかってことよ」
「力の差を埋める?」
「そ。望美は女で、相手にするのは男。女の望美がどんなに頑張って鍛錬を積んだって
元々の身体能力に差があるんだから、どうしても力に差ができちゃうでしょう?」
望美は『うん』と素直に頷く。
つまり、男と女の力の差っていうのは、そう簡単には埋まらないってことなんだけど。
「だから、真っ向から斬りかかっていって、せり合いになったときにどうしても力負けしちゃうのよね。
その場合、望美ならどうする?」
「私なら、せり合いにならないようにする…かな」
「ビンゴ!」
やっぱり頭はいいわね。
理解が早くて助かるわっ。
「それを具体的にどうするかなんだけど。これは実際に見てもらったほうが早いかも」
口で説明するのは簡単だけれど、それじゃあ頭で理解しただけになっちゃうからね。
実際にどういう感じなのかっていうのを、イメージで掴んでもらった方がいい。
「今度は私が斬りかかるから、望美はそれを防いでみてくれる?」
もちろん、本気でいくから。
そうしたら、もう一つ足りないものも分かると思うしね。
私はスラッと鞘から剣を抜き取るとそれを構える。
望美を見る目は敵を見る目へと変わり、自分でも殺気が渦巻いているのが分かる。
私は地面を一蹴りした。
「どう?分かった?」
ほんの一瞬の出来事。
私の刀は望美の喉元ギリギリで止まっていた。
背後を取られてしまった望美は、防ぐことができなかったのだ。
「速い…」
「そういうこと。折角男の人より身軽なんだからさ、スピードを高めて力の差を埋めようって話なのよね。
それともう一つは、殺気…かな。一瞬動けなかったでしょう?」
私の殺気をぶつけられて…。
一瞬でも恐怖を感じてしまったでしょう?
それもまた戦術の一つだったりするのよね。
「確かに…圧倒されて一瞬身動きできなかった…。けど私は…」
「むやみには人を殺す気はない?戦場に行ったら、そんなこと言っていられなくなるよ?」
「だけど…分かってるんだけどね…」
人を殺したくないって気持ち…分かるよ?
私も最初はそうだったから…。
だからできることならば、望美に戦場へ行って欲しくないんだけれどね。
それでも、行くとあなたが決めたのならば…私はその手伝いをしてあげたいの。
だけれど、人を殺させるつもりはない。
私と違って、彼女はまだ汚れてはいなから…。
今ならまだ間に合う。
「きつい言い方になってごめんね。一応そうなるかもしれないって、覚悟だけはしておいてほしくて…。
それに殺気の話も、絶対に殺せって訳じゃないから。今みたいに殺気一つで相手を怯ませることが
出来るってことを言いたかったの。それだけでも少しは楽になるでしょ?」
「ううん。謝らなくていいよ。何か気が引き締まる思いがしたし」
そういう望美の表情は、やっぱり神子としての…自分のやるべきことが分かっている目をしていた。
綺麗な目。
私が持ったことのない、強い光が彼女の目には宿っていた。
「なんか、やっぱり勉強になるよ。それに、教えるの上手だし。もしかして、誰かに教えてたことある?」
「上手かは分からないけど…。一応人に教えてたことあるかな。というか、今もたまにね」
まぁ…教えてるのは剣が主ではないけれど。
「そういえば、の話って聞いたこと無いよね。多少は九郎さんたちから聞いてるけど…の話、聞いてみたいな」
「いいけど…。ここじゃ何だし、屋敷で話さない?そろそろ皆も心配してるだろうし」
そうなのよね。
望美ったら、一人で屋敷を抜け出してくるんだもの。
きっと皆、心配してるだろうし。
ヘタすれば怒ってるかも…。
特に私の兄貴分の彼がね…。
「望美!何度言ったら分かるんだ!?あれほど一人で出歩くなと言っただろう!?」
屋敷に戻ったら、やっぱり初っ端からお叱りをうけました。
とは言っても、私がじゃないけれど。
「ご…ごめんなさい」
望美がやっちゃったという顔をする。
確かに望美も悪いと思うけど…無事だったんだから、何もそこまで怒鳴ることもないだろうに。
ねぇ?
「!お前もだ!」
「は?私も!?」
何で私も怒られなきゃならないのか。
私は勝手に抜け出したわけでもなければ…
ましてや、この屋敷に一緒にお世話になっているわけでもない。
「私は関係ないでしょ!?」
「あるだろう!女二人で朝早くからうろつく奴があるか!何かあったらどうするつもりだ!」
「どうするもこうするも、相手が可哀想って話になるだけじゃない」
「そういう意味じゃない!ったく…お前がいくら強くてもだな―――…」
何よ?
分かってるよ?一応ね。
そういう意味で言ったんじゃないことぐらい。
でも、ああ言われればこう言いたくなるって性格なのは、九郎さんも知ってるでしょ。
威張れないことは知ってるけど!
一々突っかかりたくなる言い方するからいけないのよ(反省の色無し)
「そこまでにしておきなよ」
突如掛かった声に振り向けば、そこにはヒノエくんの姿が。
いたのね…。
と失礼だけれど内心舌打ちしてしまう。
「姫君たちも無事だったんだしさ、いいんじゃない?」
「ヒノエは相変わらず女には優しいな…」
「九郎が厳しすぎるんじゃない?」
ため息をつく九郎さんに、悪びれた様子もないヒノエくん。
この二人って、正反対だよね。色々と。
九郎さんは堅物だけれど、ヒノエくんは軟派な性格だし。
馬鹿が付きそうなほど単純な九郎さんだけど…反対にくせ者のヒノエくん。
あ、結構酷いこと言ってるかも。
いけない、いけない。
「それじゃあ、私達はこれで。望美と話をする約束だから」
さりげなく去ろうとしたのだが…
望美がとんでもないことを言い出した。
「よかったら、九郎さんとヒノエくんもどう?の昔話聞かせてもらうんだけど」
「…望美!?」
ちょっと、それは勘弁してほしいんですが!
ただえさえ、昔の話ってあまりしたくなかったりするから、出来ることなら、変な部分は省いて話そうと思っていたのに。
この二人がいたら、色々誤魔化しがきかなくなるじゃないの(汗)
「へえ、の昔の話ね。面白そうだね」
「そう言えば、俺も詳しくは知らないな」
って、何興味深々なのよ!?
二人とも、ろくでもない人生送ってるってことぐらい知ってるでしょ!
「…何でこんなことになっちゃうのか…」
梶原邸のある一室。
私はそこで盛大にため息をついていた。
あの後、逃げようとする私を皆して引きずって…連れ込まれたのがこの部屋ってわけでして。
もう、逃げられないってわけですか、ね…?
「ま、簡単に言えばですね。前にも言ったように、私がこの世界に来たのは7歳の時なの。
それで、一人で森の中にいたら、偶然通りかかった政子様に拾われたってわけ」
つらつらと、当たり障りの無い程度に話を進めていく。
向こうの世界で何処に住んでたとか、政子様と出会ってからはどういう生活をしてたとか、そんな話。
「九郎さんと初めて会ったのは、政子様たちの婚儀の時だったんだよね。
その後弁慶さんとも出会って…。今とはまるで別人だったなぁ…」
「弁慶さんが?」
「そうそう、今みたいに丁寧な話し方なんてしなかったし…。もっと毒舌だったよ」
何度思い出しても、絶対今の弁慶さんは別人だと思う。
あのスパルタ教育は忘れない!!
一生忘れてたまるかっ。
「あいつは、今も昔も何企んでるか分からないからね」
「そう言えば、弁慶さんも『ヒノエには気をつけて下さいね』って言ってたけど…二人って知り合いなの?」
最初に京に向かう際に言ってたよね?確かそうやって。
未だにその意味が分からないんだけど…。
だって、ヒノエくんとあの日に会ってるってこと、弁慶さんは知らないわけだから…
そのことじゃないだろうしね。
「あいつ、そんなこと言ってたのかよ…。まぁ、一応はね。弁慶も熊野出身なんだよ」
「そうか、ヒノエくんも熊野出身だよね。知り合いでも不思議じゃないんだ」
望美は納得してるみたい。それに九郎さんも。
そっか、二人は知らないんだっけ。
ヒノエくんが熊野別当だってこと。
どうやら、彼もそのことを隠してるみたいだし…バラす必要もないからいいか。
「それで、は政子さんのところで何の仕事をしてるの?」
望美のその質問に、ドキッとした。
きたか…と。
九郎さんは本当のことを知ってるけど、望美とヒノエくんには何て話そうかな…。
いや、ヒノエくんは気づいてるっていうか、知ってそうだけど。
「私の仕事は、主に政子様の護衛と情報収集だよ」
「それって、どんな事するの?」
うーん…、突っ込まれると困るかも。
だって、護衛って聞こえはいいけど、ようは政子様に命じられれば人を斬り捨てるってことだし…。
情報収集にしたって、結構やばい事もやってるからね。
例えば、敵のうち誰か一人殺して、その人に成りすますとか。
もちろん、その一人は何の罪もない人…。
きっと望美が聞けば、嫌な顔をするだろう。
それに、私は『仕事』をしてるときの自分が嫌いだから。
だから…あまりその事を話すのが好きではない。
命令ならば、誰でも斬り捨てる…まるで人形のようだから…。
それが例え仲間であっても、ね…。
それを知ったら、あなたも私を嫌いになるでしょ…?
「簡単に言えば、熊野の烏と似たようなものだよ。前に烏の話はしただろ?」
思ってもみなかったヒノエくんからの助け舟。
思わず彼の顔を凝視してしまう。
「そうなんだ。も大変だね」
って望美は一人納得してるけれど。
どうやら助けてくれた?
「そうだ、私も望美に一つ聞きたいことがあるんだけど…。望美の生まれたのって西暦何年?」
そうだ、折角だからこの疑問も解決しておこう。
こんな風に聞けるときが、またあるとは限らないしね。
「私?19―――…」
「まさかとは思っていたけど…」
夜の庭に出て、池の淵にしゃがんで池を覗き込むと、軽くため息をつく。
望美から返ってきた答えは、衝撃の答えだった。
それでも、予想してなかったわけではないのだけれど…。
ショックなことはショックだ。
「どうしたんだい?」
ふと池に月以外の影が映った。
水面に映ってもハッキリと分かる緋色。
「ヒノエくんか。ビックリさせないでよね」
振り向くことはせず上を見上げれば、そこには私を上から覗き込むように見下ろしているヒノエ君がいた。
何で彼がここにいるかっていうのは、私が梶原邸に今夜だけお世話になってるから。
話し込んでたら、いつの間にか外は真っ暗で。
一人で帰れるっていったけれど、猛反対されて引き止められたってわけ。
「珍しいね。が気配に気付かないなんて」
「そうでもないけど…。いつもいつも、気を張ってるわけじゃないし」
そうは言うけれど、気配に気付かないのは気が緩みすぎだ。
それも、声をかけられるまで気付かないなんて…。
「ふふっ、確かにそういう所があった方が人間らしいと思うけどね」
人間らしい…か。
そっか、ヒノエくんは人形の頃の私を…心が無かった私を知っているんだっけ。
「それで?そんなにさっきのことが気になるのか?」
「まぁ少しはね…。予想してなかったわけじゃないけど。でもまさか時間まで超えてたなんて…ね」
望美の生まれた年は、私の生まれた年より前だった。
7歳の私が望美たちと出会ったとき、彼女は今の望美と変わらない姿だった。
それに、あの時望美は向こうの世界に残ったはずなのに、私はこの世界で望美と再び出会った…。
不思議でならなかったそれが…
もし私が、望美たちがこの世界に現れる前の時空に飛ばされたのなら…納得がいく。
「そんなこと言えば、オレ達はどうなるんだい?」
「確かに…」
驚いてたのは彼らも一緒だったしね。
世界が違うとはいえ、一応800年以上も差があるんだから。
頭が真っ白状態で、固まった九郎さんは見ものだったわ。
今思い出しても笑える(失礼)
「そう言えば、ヒノエくんにも聞きたいことがあるんだよね」
「オレに?」
いつの間にかヒノエくんは、池の側の石に腰を下ろしていて。
私がそう言ったら、不思議そうな顔をした。
聞かれるようなことなんてあるのか?って顔だね。
「何で、あのとき助けてくれたの?」
いつ、とは言わない。
もし分からなければ、別にそれでいいから。
そう思って言ったのだけれど、彼はそれがいつの事なのかすぐに分かったらしい。
「はそういう話、したくないんだろ?昔のこともね」
私が昔のことも、仕事のことも話したくないってことに、気づいていたなんて…。
やっぱり侮れない子だわ。
「まぁね…。それともう一つ。昔のことも私のやってることも知ってるのに、何で避けないの?
この前も私のこと嫌いじゃないって…。何で…嫌いにならないの?」
いや、そう見せないで実は嫌いですとか、あるかもしれないけど。
「それこそ何でって聞きたいけどね。どうしてそんな風に思うんだい?」
「前に言ったでしょ?私を知って嫌いにならなかった人はほとんどいないって」
「なら、前に言ったとおりだよ。オレと他の奴らを一緒にするなって言っただろ?」
「まあ…」
確かに言われましたけれど…。
本当に信じていいの?
本当にヒノエくんは今までの人とは違うって…。
「信じるだろう?」
信じてくれるか?じゃないわけですね。
信じるだろう?…か。
完全に信じるって決め付けてますね。
「少しだけね」
「本当につれないね」
少しだけと言ったけれど。
でも、本当はもっとだよ?
だけれど悔しいから、それは黙っておこうかな。
「これから信じさせてくれるんでしょ?」
みんなと違うって…証明してくれるんでしょう?
もしかしたら、私の願いが叶う日も近いのかもね…。
あなたが叶えてくれるのかもしれないと、そう期待していていいのかな?
「当然だろ」
そう不敵に微笑んだ彼に私も微笑み返す。
嬉しかったよ?
嫌いじゃないと言ってくれたこと…
助けてくれたこと…
だから…
「ありがとう、ヒノエくん―――…」
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あとがき
あれですね。
ようは、望美より前の時空にさんが飛ばされたってことを書きたかっただけです。
すみませんっ。それだけのために長々と…。
でも、少しはヒノエと接近してくれたかな??
というか、してくれないと話が進まないっ!!