「ええー!今日も売り切れなの!?」
「悪いねぇ…また明日もうちょっと早く来てみなよ」
「くっそー、待ってろよもちゴマーー!!」
友達に笑われながら叫ぶ姿は、いつもよりアホらしいと思った。
一番近い場所
『よかったら付き合ってくれないかな?』
メールってのは面倒くさい。
口にすれば1秒で済むことを何十秒もかけて打つなんて。
時間の無駄。
でも女子は直接話すのが恥ずかしいから、と男子のメールアドレスを知りたがる。
変な奴ら。
男子なんか話し掛けられた方が喜ぶぞ、多分。
『ごめん、今そういう気ないから』
いつもこれを送る。
そろそろ定型文に登録してもいいな、というほど常用。
イヤミっぽいかもしれないが、冗談半分でこんなことを言ってくるやつははっきり言って多い。
ま、俺ってモテるからな……。
「今日も一人寂しく教室の隅で携帯いじってんのねー」
「…お前が遅いからだ」
「へへ、お待たせしました」
部活がない日はいつも一緒に帰る。
…つっても部活が重なった日も一緒に帰る。
帰る方向が同じで、必然的にそうなっているわけだけども。
「いやだなー、テスト」
「今回も文系だけを鍛えるのか?」
「こ、今回は数学頑張るわよ」
「化学は」
「…………」
黙り込んで顔を逸らすところは子供っぽい。
コイツの感情をすぐに表に出すところはある意味羨ましい。
「……い、………よ」
「…で………だろ?」
「………………………?」
視線を感じて、ふと見るとウチの制服着た野郎3人組。
あー…っつか同じクラスだな。
確か前にのことで…。
「……………………………」
「?何?」
「…髪にゴミついてる」
「え、嘘っ」
と、髪に触れようとする手を掴んだ。
…俺ってあくどいやり方するよな。
なんて、無駄にに密着しながら思った。
不思議そうに見上げるの額に触れる。
ゴミなんか、最初からついてない前髪に。
チラ、と見ると中の一人が真っ赤になって俺たちを凝視してた。
……地味にモテるんだよな、コイツ。
「取れた」
「恥ずかし…前髪についてたんだ」
「やっぱ付き合ってたんだよっ、と!」
「おかしいなぁ、って誰とも付き合ってないはずだったんだけど……」
そんな声を聞いて、緩みそうになる口元を押さえた。
まんまと引っかかってやんの。
付き合う、なんて考えたこともなかったな。
噂をされたことは何度もあったけど。
片っ端からの奴もみ消していったからな。
…つまんねぇ、とか正直思ったけど。
その言葉さえも、口にはできなくて。
は、思ったことを正直に口にして。
嬉しかったこととか、悲しかったこととか俺に話してくれるけど。
我慢してることとか、ちょっと優しくすればすぐに話してくれるけど。
俺は、肝心なことをいつも言えなくて。
にとって、一番近い場所にいると確信してる。
俺にとっても、は一番近い。
そして、誰よりも遠い人。
「じゃあ、また明日ね」
俺たちは、これ以上近づけないという距離にいる。
そう、思っているのは俺だけなのかもしれない。
だから、想いを言葉にすることはできなくて。
臆病な俺の側にはいつもお前がいるはずなのに。
何故か不安になって仕方ないんだ、。
「殿、まだ起きているの?」
「朔ちゃんこそ、お肌が荒れちゃうよ」
「もう。からかわないで」
遠い、今は遠いどこかにいるお前も。
一番近くに俺を感じていればいいと、願っている。
(060420) 一番近い場所
++
遠く離れてるほどに近くに感じちゃってる男主人公。
ホントに言ってみれば譲並みのポジションの彼。
でも不幸役にならないのはきっと性格のせいですよね。
ということで同じ立場の譲は人生の8割損しているけれど、あんなおいしいポジションもない。
どんなサイトでも扱ってもらえるから(酷)
++
譲れないモノとセットで頂いてきてしまいました。
男主視点ですね。
ホントに素敵で感服します!
こんな幼馴染が欲しかった…(ぇ)